池田 真朗「民法はおもしろい」を読む。

「人生の必修科目」ということが良くわかる一冊。 連帯保証人と保証人ってどう違うんだっけ?みたいな基本的なことから、民法改正ってどう進んでるの?とかそもそも日本の民法ってどういう経緯で設立し、どんな民法の影響を受けてるの?と言ったさまざまな切り口で民法について解説した内容。
タイトル通り、読者に興味喚起させようと構成や語り口を面白くしようと意識しており面白い。著者も経験豊富で色んな法関係の委員や組織に所属していて、カンボジアなど海外の民法作成に貢献したり偉い人。法律ってあんま革新的な発展がないからノーベル法律学賞とかないんだよねー、と言ったり、成文法と判例法によって国の性格が分かるよね、みたいな話だったり、法律学って視聴覚に最も向かない、言葉だけの世界だからポップに売りだせないんだよね、みたいな納得感のある話が面白い。もう少し具体的になると、振込詐欺を題材にして契約自由の意志と詐欺の考え方とか、著者が債権譲渡研究の権威らしく売掛金やリース債券から資金調達する手法やABLという担保を活かした方法がこれまでの不動産担保による商慣習を変えていけるんじゃないか、という自分の過去の業務にも関わる馴染のある話とかもあり。
所有権と占有権の違いとか、不動産と登記の仕組みとか、内容証明郵便が1通2500円で督促状とかに使われる怖い郵便だよ、などホントに生きてく上で役立つ豆知識も多い。最近ニュースになった地面師事件じゃないけど、二重譲渡された債権なんて話も出てくる。生殖補助医療や電子化によって民法改正の必要が出てきているとかも。
あと、一番感心したのが、著者が「学者があるべき社会を作るために立法する」というあり方を良しとせず、「習俗が立法を要求する社会」こそが市民社会に必要だと考えていると述べており、その通りだなぁと思えたこと。こういうのは、市民を愚として導くべし、という考えに基づいていると。