「スタジオの音が聴こえる 名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア」を読む。

面白かった。タイトル通り、全19回に渡って70、80年代の名盤を中心に、それが生まれたスタジオの成り立ちや設計思想、スタジオバンドのメンバーや当時の機材に関する情報をきちんとリサーチして、まとめたもの。アメリカが多いけど、世界各国のスタジオについて触れている。NYのメディア・サウンドというスタジオでは特殊な建物を活かしチャーチ・リヴァーブがあって最新のNYソウルやディスコを録っていたとか、スライ・ロビーが制作に携わった、grace jonesの「WARM LEATHERETTE」はコンパス・ポイント・スタジオというスタジオで録られていて、当時音の良さに業界がざわついたとか、知ってる曲やアーティストの裏話とかも面白い。ビートルズのサージェントペパーズは4トラックであんな実験的なことをしていたのに、それから10年ほどでほとんどのスタジオで24トラックが標準になったとか。技術の進化によってスタジオ・ミュージシャンの仕事も一発録りにこだわる必要がなくなり、物凄く高い技術を持たなくても良くなったという。なんと、今では信じがたいが、ビーチ・ボーイズなど正規のドラムのメンバーがいるバンドでもレコーディングはスタジオ・ミュージシャンが演奏していたりしたらしい。複数のミュージシャンがいっせーので録音する形から、細切れに録ってオーバーダビングしたりEQしたりという音楽制作スタイルに移行していくという。
また、音楽をこうやってエンジニア視点で分析するって改めて興味深いなというか、一応DJという形で音楽との関わりがあるけど、こういうミキシングとかマスタリングとして音源作成に関わるのも面白いなと思った。理系で電気工学を学んだエンジニア出身のプロデューサーとかも多いし、ダブ系の重鎮はほとんどそうだろう。本書の冒頭にもあるけど、レコード産業がたくさんの人の仕事で成り立つという意味で、レコードはスタジオで生み出される総合芸術であるというのも納得感あった。今後自分でもこういう活動していきたいなとうっすら思った。
後、マッスル・ショールズというスタジオを舞台にした「黄金のメロディ」という映画もあるそうなので、それも近々見てみたいと思う。

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を観る。

これもすごくアメリカ的なエンターテイメント・サスペンス作品という感じで良かった。スティーブン・スピルバーグがトランプ政権の現在なるべく急ぎで公開したい、という思いのもとで制作されたという、史実を基にした政府と報道機関の戦いを描いた作品。ワシントンポストの編集長をトム・ハンクス、社長をメリル・ストリープが演じており、安定感抜群で最後まで手に汗握る展開となっており楽しめた。ラストシーンも「そうきたか!」という意外性と同時に納得感もあって印象に残るラストとなった。
個人的には、アメリカのメディア事情が整理できたのも学びになった。ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムスの関係とか、地方紙と全国紙の関係とか、情報源と報道機関の関係とか、アメリカにおける民主主義の根幹として報道がどのような役割を持つのか、とか。正しく官僚への忖度や報道機関に対しての恫喝で現代の民主主義を失墜させたabegateという不祥事を起こした安倍内閣は観て自らの姿勢を学ぶべき映画でもある。トム・ハンクスが、政府からだけでなく自社の役員や弁護士などステークホルダー皆から「伝統ある会社も、自分の職も捨てるだけだ」と反対されながらも、「報道の自由を守るには報道するしかない」と語った名セリフは覚えておきたい。

「ドラフト・デイ」を観る。

ビジネスがらみの映画観たいなーと思って観た。めちゃアメリカ感満載で楽しい。NFLの弱小チームのGMを務める主人公が、チームのオーナー、自分のチームの監督、ライバルのGM、売り込みをかける選手、果ては自分の家族等の様々なステークホルダーの間で複雑に交錯する権謀術数に板挟みになりながら、運命のドラフト日で仕事をこなす姿を描いた作品。主演は家ヴィン・コスナー。
アメフト映画だけど、全く試合シーンが出てこないという完全ビジネス映画。全く分からんけど、往年の名選手が本人役で出演してたり、アメフトファンならより楽しめる内容となっている。一部、NFLの広告映画でしかない、とかご都合主義的に全てうまくいくラストとか出来すぎとか批判もされてるみたいだけど、ドラフトでの駆け引きとか出し抜く高揚感とか映画的で良い。アメフトに関する知識は「アイシールド21」を少し読んだことある位しかないけど、ルールとかドラフトの仕組みを知らなくても楽しめる。何か想像以上にゲーム性が高いというか、GMたちは欲しい選手のリストや補強したいポジションと勘案しながらお互いの指名権をトレードしていたりと、ドラフト自体が一つの競技みたいだなぁと思った。
それにしてもほぼアメリカとその経済圏にいる国位でしか普及していないし、こんなに怪我の多い危険なスポーツがここまで盛り上がるというのは恐れ入る。アメリカのフィジカルエリートたちはまずアメフトに挑戦し、次にバスケや野球を目指すというスポーツ産業の構造もなかなか理屈で納得しづらい。ファンたちも温度差は勿論あるのだろうけど超熱狂的。本作の舞台がクリーブランドなんだけど、「うちには青い空も広い海もない、あるのはスポーツチームだ」みたいに、街ぐるみで応援していて、ドラフトでミスろうものならファンにぶっ殺されそうな雰囲気だったりするのだ。継続したスポーツチームの応援に熱狂したことがない人生だけど、知らない世界で楽しそうだなぁとも感じる。

Spigenのスマホケース iPhone8を買った。

iPhone8買ってから大分経つけど。iPhone8はすべすべだったのでカメラで使う時とか落としそうでヒヤヒヤしてた約2週間だったけど、これ買っていい具合に手にフィットするので安心感がある。もともと物持ちが良いので前のiphone5sも全く落としたり壊れることなく5年以上使ってたけど。勿論、TPU素材のケースで耐久性もあるらしいし多少雑に扱っても問題ないというのは良い。スタンド付きのタイプを選んだのは、結構寝ながら横向きになってスマホを操作する時間が長いから。結構便利。スタンドがたまに意図せず起きてしまうなんていうレビューも見たけど、そこまで邪魔には感じない。iPhone自体のデザインも楽しめるし、いい買い物をした。

Paranoia106「Landscape」を聴く。

https://open.spotify.com/artist/3LBK9wsDYpn9gfwAIDAVsX

最近あまりスベスベしたりひんやりした音楽を聴いてなかったけど、この方のアルバムにしっとり惹かれた。全編通して冷たくて透き通った音に浸れる。全然知らない人だったのだが、YMO世代のアナログシンセ厨でデトロイトテクノ好きでその筋では有名らしい。似た傾向のアーティストで言うとkaitoとかwatanabe hiroshiみがある。めちゃくちゃディープで、かつケバくもならない切なめなメロディーがある。アーバンなシティー感もある。サイバーパンク的SF感もある。ようは最高。

「まんがでわかるLinux シス管系女子」を読む。

例によってマンガとしては別に面白くはない。毎回ダジャレを突っ込んでくるところとかもちょっと寒い。けど、著者自身があとがきで書いてるように、自分の経験を基にlinuxを使い始めた人が躓きやすいところとか、実業務で必要になりそうなことをコマンドに落とし込んで紹介する辺りは結構ためになる。特に、cut、sort、uniqueのコマンドを使ってappachのアクセスログを解析して訪問回数の多いページを集計してランキングにする、とかは参考になった。特に、今はインフラエンジニアとして再就職しようかと思ってるので、この辺の知識は今からrubyとかPHPとか学び直すより戦略としても重要かなと思い直した。個人的には多少すでにインフラ管理のためにlinuxに触れていることもあり、この本の前半、中盤位は既に知っていることがメインだったが、初めての人には全然お勧めできる内容だった。シス管系女子はシリーズ化しており、続編はもっと複雑なbashスクリプトとかを扱っているみたいなので再就職までに引き続き読みこんで基本的なことは出来るようになっておこうと思う。

「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」」を読む。

最近よくキャリアについて発信してるyou tuberの「勝又健太 a.k.a. テック系Youtuber」氏がtwitterでお勧めしてるのを見て読んでみた。ユーモアあふれる筆致で読み物としても勉強になるという意味でも面白かった。著者は学生時代に大きなやけどを負ったことをきっかけに、「痛みの研究から視野を広げ、経験を積んでもそこから学ぶことなく失敗を繰り返してしまう状況」について研究を重ねていったという、行動経済学の第一人者。従来のミクロ経済学がモデルとしていたような合理的な人間なんてかなり眉唾もので、実際の人間はこんなに不合理に行動しがちなんだよ、というのを実験を通じて解き明かすという内容。不合理なんだけど、きちんとそれを自覚しておけばその不合理な行動を回避することも出来るというのがミソ。将来のことを見通して貯金したり、保険をかけたり、ダメな生活習慣をいつまでも続けたりするのは極めて人間的なので、それを改めていくために、また箇条書きにして、今後の人生の頭の隅に置けるように気をつける。
・給料に対する男の満足度は、妻の姉妹の夫より多く稼いでいるかどうかで決まる。(比較しやすい対象がないと合理的な判断が出来ない。相対性の連鎖)
・受給と供給の誤謬 「トムは人間の行動の偉大なる法則を発見した。人に何かを欲しがらせるには、それが簡単に手に入らないようにすればいい」大した需要がないものでも、高い金額や広告の見せ方で貴重性をすりこむことが出来る。
・恣意の一貫性 「最初の価格はほとんど「恣意」的で、でたらめな質問に対する答えにも影響されうる。しかし、いったんその価格が自分の中で定まると、ある品物にいくら出すかだけでなく、関連のある品物にどれだけ出すかまで方向づけられてしまう」
・仕事と遊びの曖昧さ 「仕事というのは人がやらなければならないことであり、遊びというのは人がやらなくてもいいことであると理解したことだろう。‹略›イギリスには、夏になると四頭だとの客馬車で毎日30キロも40キロも移動する金持ちがいる。ひどく金がかかって、金持ちにしかできないことだからだ。もしこれに賃金を払うと言われたら、金持ちの特権だったものが仕事に変わってしまい、誰もこんなことをしなくなるだろう」
・ゼロコストのコスト 「何かが無料だと、わたしたちはだれでもちょっとばかり興奮しすぎること、そしてその結果、最善の利益をもたらす決定とはべつの決定をくだす場合があることだ」
・社会規範のコスト 「託児所で、子供の迎えに遅れてくる親に罰金を科すのが有効かどうかを調査した。そして、罰金はうまく機能しないばかりか、長期的に観ると悪影響が出ると結論づけた。‹略›罰金を科したことで、託児所は意図せずに社会規範を市場規範に切り替えてしまった。遅刻した分をお金で支払うことになると、‹略›ちょくちょく迎えの時間に遅れるようになった」これは二酸化炭素排出権取引にも言えること。後、プレゼントは経済効率が悪いものの、社会の潤滑油としては重要。感謝の気持ちを現金で示しても相手を怒らせるだけ。
・予測の効果 客が食ってるのはラーメンじゃない、情報を食ってるんだ、って例の名言の奴ね。蘊蓄を先に知ってからサービスを経験して、その通りだと納得するという消費形態。
・価格の力 高いものほどプラセボ効果で実際に満足度が高まるという例のやつ。
・公共財ゲーム 「囚人のジレンマ」と同じような理論。協力すれば最も良いサービスを受けられるのに、個々人の利益を追求する結果皆が損をする。
・不正行為は、現金から一歩離れたときにやりやすくなる。