「ヘイトフル・エイト」を観る。

ちょっと期待が高すぎたけど、面白かった。南北戦争後のアメリカのワイオミングの雪山を舞台に、吹雪でロッジに閉じ込められた8人の訳アリ男女が騙し合いをするというお話。監督はタランティーノで、サミュエル・L・ジャクソンとかティム・ロスとかゆかりのある俳優陣が癖のあるキャラを演じる。音楽はエンリオ・モリコーネが担当しており、タイトルのフォントとか章ごとのタイトル構成だったり、ファッションとか「往年の映画」っぽい作りが良い。けど、タランティーノらしくスプラッタなグロ描写あり。
3時間の上映時間はちょっと長い。特に序盤は冗長に感じる。中盤に大きな事件は起こって、後はその種明し的な展開になるんだけど、正直そんなに凝った仕掛けでもないのであっと驚くようなビックリ感はなかった。とは言え飽き飽きするようなレベルでもないので楽しいっちゃ楽しいんだけど、すっきり2時間位で編集できそうな気がする。個人的には、現代にもその影響を引きずってる南北戦争アメリカ人の関係性が少し理解できた気がして学びになった。いまだに南軍旗を家につけてる人がいるとかね。

富士山さんは思春期」を読む。

去年読んで最も萌えたマンガ「猫のお寺の知恩さん」のオジロマコト氏の前作。これもめっちゃ良かった。何の変哲もない学園ラブコメなんだけど、素晴らしい画力と演出力によって描かれる富士山さん(と上場くん)が大好きになってしまう。
本作も、これといって大きなイベントは起きない。連載初回で中学生の幼馴染通しが告白して付き合うというだけ。一応終盤の中学卒業前の修学旅行中に、これまで周囲にひた隠しにしてた交際をオープンにするという変化があるけど、「耳をすませば」のように二人は幸せなまま物語も終わる。高校は恐らく進路も別れるんだろうけど、そういう葛藤とかその後は分からない。でも、楽しそうな日常が続きそうという「稲中卓球部」のようないつものノリで終わるのは爽やかで後味がよかった。
後、微エロなスポーツマン女子の日常モノという意味ではやはり「高校球児ザワさん」が凄く雰囲気が近い。どちらも大好きなマンガだ。自分の中学・高校生活と地続き感があるというか、「あー、こんな人周りにいたかも」位の距離感。政治性も経済性も物語に持ち込まれず、デートでたまたま入ってしまった本格的な喫茶店のコーヒー450円に驚いてしまう中学生男女のほほえましさ。最高。

APPLE MacBook Pro with Retina Display」を買った。

去年末、転職活動を進めるに当たって、きちんとした開発環境だったり、もくもく勉強会系に参加するにはmacbookが必要だとすごく思っていて買ってみた。恐らく、探した時間は10時間を超える位、かなりきっちり調べて買った。2019年の前後、開発に使えるmacbookは2015年以降がいいとか、接続端子が多い方が結局使いやすいとか、充電回数が少ない方がいいとか、USキーボードに慣れておきたいとか、SSD256GB以上とか、コーディング剥がれがないとか、色んなサイトや口コミを調べて買った。結果、10万を切る価格で買うことが出来た。満足。これで旅行行ってもカフェ行ってもネットに繋げて楽しむことが出来る。
用途としては、開発に使うのは勿論、日々のタスク管理、音楽制作、DJ、簡単な映像、画像の加工辺りが出来ればいいかなと思ってる。スペック的にはほとんど困らないハズなので、遊び倒したい。

「マネーフットボール」を読む。

サッカー版のグラゼニと聞いて昔から読んでみたかった作品。埼玉育ちでユースからプロ入りした20歳の高卒ルーキーDFが、レンタル移籍のため予算10億で運営する愛媛のサッカーチーム(現実ではJ2だけど、N2と表現されている)で奮闘し、チームと共に成長してプレーオフ進出するという物語。有名選手のそっくりさんも多数登場するし、作者のサッカー愛が伝わって楽しかった。
最後はちょっと打ち切り感プンプンだったけど、自身の稼ぎしか気にせず、チームやサポーターやスポンサーや監督や経営陣など自分を取り巻く人々の仕事ぶりを理解できず、我がままだった主人公が、徐々に周囲が見え始めて選手としても成長してく様が面白い。サッカービジネスの裏側もきちんと描かれていて、興業として成り立たせるためのチーム戦略や緻密なデータに基づくサッカー戦略論、代理人の制度と役割とか色んな立場の人間の思惑がこれまで知らなかったプロスポーツの世界を除いているみたいで楽しい。
しかし、これだけメジャーになってもやはり野球選手と比べると全く見劣りする選手の給料とかを考えると、なかなかサッカーチーム経営って難しいんだろうなと改めて思いもした。昨年からtwitterでえとみほさんという元snapchatの社長で今サッカーチームの広報担当をしている人をウォッチしているけど、きちんと情報開示してスポーツを盛り上げようとしているシーンの動きは今後も追って行きたいなと感じる。

「寂しいのはアンタだけじゃない」を読む。

去年の年末に数冊試し読みした吉本浩二作品。特に「ラブ・ウォーズ」が最高にかっこ悪くて楽しくて、久々にマンガをレンタルしてみた。今回は初の試みで、DMMレンタルを利用。「ラブ・ウォーズ」と全く違い、非常にシリアスで作者の真摯で丁寧な考えが伝わるノンフィクションマンガだった。福祉大学出身である作者がひょんなことから触れた聴覚障害を持つ方の知覚をマンガの世界で視覚的に描く意欲作品となっている。その中でも、数年前に世間をにぎわせた佐村河内氏をじっくり取材し、聴覚障害を取り巻く現状の難しさを象徴的に取り上げている。非常に学びの多いマンガだった。
マンガならではの視覚表現が眉唾で、「耳鳴り」を頭の上に飛行機が飛んでいる様子で表現したり、体の横でベースを弾く人がいるという様子で表現したり、当事者が「その通り!」と納得できるような的確な表現を味わうことが出来る。デフ・ジョークというらしいけど、聴覚障害を持つ方の冗談も新鮮で驚いた。すっごい可愛い女性がいたけど、話しかけられない、ナンパが出来ねぇ!とかね。個人的には、小学生の頃に「遥かなる甲子園」という作品を読んだけど、それよりも視覚的な面白さが充実している。また、聴覚障害を持つ当事者だけでなく、医者や支援団体など、様々な立場の人達が抱える問題点を浮き彫りにし、全く知らなかった世界を知ることが出来た。補聴器のあり方一つとっても諸外国とかなり違うというのも学びになった。
物語としては何か分かりやすい答えが出るわけじゃないけど、良作。

ズーランダーを観る。

ザ・バカ映画。ベン・スティラーオーウェン・ウィルソン、ウィル・フェレルの3人がふざけまくる。頭空っぽのメンズモデルがデザイナーに洗脳されて政府要人を暗殺しようとするのを食い止めるという内容。カリカチュアされたゲイが多かったり、ファッション業界を大分バカにしてるので、特にモード系の人にはイラッとする描写も多いかもしれないが、大いに笑えた。出てくる服はどれもくっそダサい。内輪だけで盛り上がってる感じ。冒頭で主人公のモデル仲間が無駄に4人も爆死するシーンとかもあるんだけどすがすがしい位アホで笑った。音楽も80'のバブルガムポップという感じでこれまたダサい。キーになる曲が、Frankie Goes To Hollywoodのrelax。曲自体は割と陶酔感あって好きなんだけど、本作での取り扱われ方は「すごいよ!マサルさん」のペニシリンの曲みたいな茶化す使われ方。ラストはホームレスのファッションをトップデザイナーが再現するというショーなんだが、なかなか痛烈な皮肉。屑みたいな服を誉めそやすために実名で出演するセレブ達(パリス・ヒルトンとかアイドル系の方々)も役どころを理解しながらシャレで出ていて良い。なぜかレニー・クラヴィッツも出演してる。

「経営戦略全史」を読む。

面白かった。著者はボストンコンサルやらアクセンチュアを経由してきたコンサルの人で、ビジネス書大賞2014経営書部門・大賞受賞したというもの。コンサルの人達が思考のフレームワークとして使うような理論とかMBAで教わる様なことって何なんだろうと思って読んでみた。約100年の経営戦略の推移を主要な学者や経営者たちの仕事ぶりを体系的に時系列で紹介していくという内容。味気ない論文と違い、注釈や章ごとのコラムなどが読み物として面白く、特に著者が設定した、実在の理論家による架空の対談とかもなかなか高度な知的遊戯として楽しめる。
冒頭から要約されてるんだけど、経営戦略の歴史としては「60年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的で、それ以降はケイパビリティ(組織・ヒト・プロセスなど)派が優勢」という。また詳細やリマインドしておきたいことを箇条書きでメモしておく。
・テイラーによる科学的管理法。怠惰と不信、恐怖が支配する19世紀の工場に科学的管理法を導入。
・フォードの効率的な大量生産システムは従業員に高給を支払うことに成功したが、全ての作業を極限まで分解して(一日に7000回タイヤをフレームにはめるだけ人とか)効率化した結果精神的苦痛から逃れることが出来なかった。
・心理学者マズローの欲求階層説にあてはめて、上記は自然なことであると説明。
・メイヨーの人間関係論。作業生産性はテイラー的な作業環境の良し悪しより、作業者の士気にもっとも左右される。
・日本でも有名なドラッカーは、GMを分析し、事業部制や分権経営などで権限移譲や自己管理の必要性を訴えた。
・チャンドラー「事業戦略と組織戦略は深く関わり、「事業→組織」も「組織→事業」もある」「組織は変えにくいので事業戦略が先導しがち」
・アンドルーズ「SWOT分析を考案するも、企業戦略は機械的には決まらない、パターン化や定型化が出来ない「アート」である」
コトラー「プロダクト・ライフサイクル戦略を考案。時流に沿って商品を開発する必要がある」
・ゼーコン「事業に自信があるなら借金を増やせ!自己資本率を挙げることだけを考えるな」
・ポーター「儲けられる市場を選んで、かつ競合に対して儲かる位置取りをしていないと、どんなに努力していてもムダ」ポジショニング派の権化。ケイパビリティは手段でしかない。戦略とはある価値のためにある価値を諦めることだ。
・クラウセヴィッツ「ナポレオンが連戦連勝出来たのは、勝てるところでしか戦わなかったからである」ランチェスターモスターもポジショニングを重視。孫子はケイパビリティやそもそも戦わないことを重視。
トヨタ式経営「在庫は悪。各工程のムダを覆い隠してしまうのでなくす」
ゼロックス「競合相手の商品のリバースエンジニアリングを実施。他業種のベストプラクティスを学ぶことで、奪われていた市場シェアを奪い返した」
イノベーションについて。はさみ跳び、ベリーロールが苦手だった選手が皆に嘲笑される中で何年も背面飛びの練習をして金メダルを取得した。
キャプランノートン「バランスト・スコアカードを提唱。短期の株価上昇のため、経営者がROEROA、PERといった財務諸表を重視し過ぎる風潮を改善」
フリードマン「ユーロを危惧。通貨の一体化は為替の固定相場制と同じ。弱い国は裏付けのない信用を得て金をつかいまくる」ブレグジットが実現しそうな今年は特に気になる。
・産業バリューチェーンの考え。21世紀となると、産業や業界、競合すら曖昧になりつつある。サプライチェーンの導入。
・東海バネ工業。オーダーメイドのバネをネット販売したら、凄まじい数のアクセスが殺到して新規顧客を発掘。当時、オーダーメイドのバネなんて誰も売っていなかった。
ムハマド・ユヌスグラミン銀行。借り手の返済能力を担保でなく仲間からの信頼で図り、高い返済率で小口の融資に成功。
・「シャプレーは、男女の結婚を巡る問題を「数学の問題」と設定して、男女間の安定的なマッチングを探すアルゴリズムを発見した。」
・ポーターは「個人ごとにカスタマイズされた教育を提供せよ」と主張。知性タイプは多様なので、ITの力で自在なプログラムを提供するように考案。アメリカのサンマル・カーンが実践中。